付録:訓練管理者とのデブリーフィング
目的
本デブリーフィングは、訓練における行動や判断を「正誤」で評価する場ではない。 構成員自身が、訓練中に何を観測し、何を考え、何を言語化できなかったかを整理し、 文明における判断資源として再配置するための対話の場である。
基本方針
- 訓練管理者は結論を与えない
- 沈黙・逡巡・未記述も重要な観測対象として扱う
- 数値よりも「違和感」「ためらい」「引っかかり」を優先する
- 個人の失敗を文明の学習資源として扱う
フェーズ1:事実の再確認
訓練管理者は、ログや記録をもとに、被験者が実際に行った行為を時系列で簡潔に確認する。
- どの時点で何を入力・記述したか
- 判断や記述に間が空いた箇所
- 他者・非ヒト知性・文明との接触の有無
この段階では解釈や評価は行わない。
フェーズ2:主観的体験の言語化
被験者は、訓練中に感じたことを自由に語る。 以下は誘導質問の例であり、必須ではない。
- 「特に印象に残っている瞬間はあったか」
- 「判断に迷った場面はあったか」
- 「何も書けなかった時間に何を感じていたか」
- 「今振り返って違和感を覚える点はあるか」
フェーズ3:構造への視点移行
訓練管理者は、被験者の発言を受けて、個人の感情や行動を超えた構造的視点へと問いを移す。
- 「それは個人の問題か、環境の設計か」
- 「同じ条件で他者はどう振る舞うと思うか」
- 「文明として何を観測できていたと言えるか」
フェーズ4:未発生・未判断の扱い
27時間多時間群文明において、 「何も起きなかった」「判断しなかった」ことは失敗ではない。 デブリーフィングでは、以下を明示的に扱う。
- なぜ判断に至らなかったのか
- どの情報があれば判断できたと感じるか
- 判断しないという選択が妥当だった可能性
フェーズ5:文明ログへの反映
デブリーフィングの結果は、個人の記録に留めず、 必要に応じて匿名化されて文明ログへ反映される。
- 有効だった思考の視点
- 不足していた語彙や概念
- 訓練設計上の改善点
締め
訓練管理者は結論を述べない。 被験者自身が「次に同様の状況に遭遇したとき、何を意識するか」を言語化することで、 デブリーフィングは終了する。
この言葉は、文明の次の判断のために保存される。